お葬式で幸福を感じられる地域社会づくりを 寺尾俊一氏 家族葬専門葬儀社オフィスシオン会長 ー奈良の創生人 Vol.2ー

「家族葬専門の葬儀社」を奈良県で創業して以来、葬儀業界に留まらない情報発信や活動を展開している寺尾俊一氏にお話をうかがいました。「奈良の創生人」では、奈良県内で様々な事業や活動を展開している人物を取材し、彼らの情熱と未来へのビジョンを深掘りしていきます。

お葬式で幸福を感じられる地域社会づくりを 寺尾俊一氏 家族葬専門葬儀社オフィスシオン会長 ー奈良の創生人 Vol.2ー

奈良ビジョンは「奈良はもっと成長できる」をスローガンに、奈良県の事業者や地域を愛する方々が地域密着繁盛を目指すための情報発信やイベント・勉強会を開催しているプロジェクトです。

お葬式で幸福を感じられる地域社会づくりを 寺尾俊一氏 家族葬専門葬儀社オフィスシオン会長 ー奈良の創生人 Vol.2ー
目次

寺尾 俊一 (てらお しゅんいち)氏

株式会社オフィスシオン 代表取締役会長
(家族葬専門葬儀社オフィスシオン)

奈良で創業するまでの歩み

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創業者・会長を務めておられる家族葬専門葬儀社オフィスシオンを奈良県で創業されて16年ほどとのことですが、奈良で創業されるまでの歩みについて教えてください。

私は1962年に三重県四日市市で産まれまして、大学生の頃に葬祭関係のイベント会社でアルバイトをしたのが葬儀社に関わるきっかけでした。それ以外にも色んなアルバイトをしていたんですが、葬儀という仕事には何か引き寄せられるものがあったんでしょうね。大学卒業後は地元で今も名門と言われる葬儀社に入社させていてただき、葬儀の大切さやノウハウなどを叩きこんでいただきました。時代はまだバブル時代の入り口で、今とは全く葬儀の事情も違いましたね。
当時はまだ地域の繋がりや仕事関係の繋がり、世間体的なものが大事な時代でしたし、葬儀は家族のプライベートなものというより、多くの方へきちんと礼儀を果たす意味合いが強かったように思います。たくさんの人が来られる大規模な葬儀の割合は今よりもはるかに多かったですね。たくさんの人が訪れる葬儀を行う為に、大型の葬儀会館が全国で必要とされていった時期でもありました。
その時期、30歳くらいの時に大手冠婚葬祭互助会に移籍し、現場業務の傍ら大型葬儀会館の企画や宣伝などを担当しました。そして36歳の頃に、関西の雄と言われる葬儀社に移籍し、その後2000年に奈良県で葬儀向けのアウトソースサービスを手掛けるオフィスシオンを設立したのが奈良で活動することになる始まりです。

家族葬専門葬儀社の始まり

お葬式で幸福を感じられる地域社会づくりを 寺尾俊一氏 家族葬専門葬儀社オフィスシオン会長 ー奈良の創生人 Vol.2ー

奈良で事業を始めた時は、葬儀社を手伝う会社だったわけですね。そこから家族葬専門葬儀社が生まれた経緯はどういったものだったのでしょうか?

まだ2000年代初頭の頃はたくさんの会葬者が集まる葬儀が主流でした。家族だけで行う小規模な葬儀は当時の葬儀社にとっては儲からない仕事ですから、「家族葬は変わり者がする葬儀」「ゴミみたいな仕事」と言われるくらい軽視される時代だったんです。今では考えられないですが、「家族葬」という看板を出す葬儀社も無かった。
しかし、少子高齢化や長引く不景気など社会環境の変化で、確実に生活者のニーズは家族だけで行う小さな葬儀に向きつつあったわけです。我々の会社のスタッフはアウトソースで色んな葬儀の現場に行くわけですから、葬儀社と生活者の意識のギャップに早くから気づいていたわけです。ある日スタッフから「家族葬や小規模のお葬式を自分たちで提供したい。地域の人たちが行いたい葬儀を私達が直接サポートできないだろうか。」という声があがりました。
よし、それなら家族葬だけを行う専門葬儀社を始めよう、と思いたったのが始まりですね。

奈良で家族葬を広域に施行する葬儀社へ

お葬式で幸福を感じられる地域社会づくりを 寺尾俊一氏 家族葬専門葬儀社オフィスシオン会長 ー奈良の創生人 Vol.2ー

家族葬を奈良で行う葬儀社になってからはどのような出来事がありましたか?

2007年ごろから本格的に家族葬専門葬儀社として活動を始めたのですが、当時は地盤もネームバリューも資金も無いわけです。小さな相談サロンとあとはホームページだけでの宣伝でした。でもその頃はホームページで家族葬を全面に出したり、価格を明示する葬儀社もほとんど無かったので、徐々に依頼をいただくようになっていきました。葬儀会館で葬儀をするより、自宅やお寺で葬儀をするほうが心の満足度は高いとは以前から感じていましたから、自宅や寺院式場等での出張葬儀をメインに提案し、奈良県全域、時には京都・三重・大阪でも行うようになりました。小規模な家族葬なら自宅で行うことができますし、最後は自宅でと望む人は多いのでご家族も喜んでいただけました。

現在は様々なご事情で自宅で葬儀を行えない方の為に、自社の葬儀施設をいくつか用意していますが、「自宅で行う家族葬」こそ故人と家族にとって一番良い葬儀だと思います。
これらの取り組みが注目されるようになり、テレビや雑誌で紹介されたり、講演や書籍出版などの機会もいただけました。業界的にみれば奈良という地方の小さな葬儀社なのですが、全国で知っていただける方が増えたのはありがたかったですね。

事業活動の強みや特徴は?

お葬式で幸福を感じられる地域社会づくりを 寺尾俊一氏 家族葬専門葬儀社オフィスシオン会長 ー奈良の創生人 Vol.2ー

今では家族葬という言葉はテレビCMが頻繁に流れるくらい一般化したように思いますが、御社の強みや特徴は何でしょうか?

いくつかありますが、まず代表を務める寺本恵美子を始め、オフィスシオンは女性の力が中心になっているということ。葬儀が大規模な時代は力仕事や段取り仕事が多いものでしたが、家族葬、小規模な葬儀であればスタッフが女性としてこの社会で育まれた直感力や共感力、ホスピタリティ、そして細部まで配慮する力がとても重要です。
もう一つの強みはリピーター、ご紹介のご依頼がとても多いことですね。今でこそ家族葬という言葉は一般化して、世の中は葬儀の宣伝で溢れていますが、我々は宣伝広告費をかけずに様々なご縁でご依頼をいただくことに注力しています。
そして設備投資にコストをかけすぎないことです。社会全体がこれから人口縮小していくなかで、葬儀会館や式場への設備投資は必ず限界がきます。多死社会で当面の間、ご葬儀の数は増えるでしょうが生産人口が減りつづける訳ですから、葬儀のような国内だけの労働集約型サービスで、右肩上がりを前提にした企業活動ではどこかで無理が来ます。
どんな環境下でも柔軟に体制を変えて対応することができる葬儀社であることが強みであり特徴だと思います。

感じている課題と課題への取り組み

お葬式で幸福を感じられる地域社会づくりを 寺尾俊一氏 家族葬専門葬儀社オフィスシオン会長 ー奈良の創生人 Vol.2ー

寺尾会長が感じる自社の課題や葬儀業界の課題はどういったものがあるでしょうか?また課題への取り組みも教えてください。

葬儀業界の課題は色々ありますが、昨今はインターネットで葬儀社を紹介して手数料を得る仲介業者や、低価格で宣伝をして、実際の施行の際は高額なサービスを提案して利益をあげようとする大手葬儀社が勢いがありますね。短期間で売上を上げて勝ち逃げを狙う短距離走のビジネスとして葬儀を捉えるなら、そういったやりかたもいいのでしょう。
ただ、果たしてそれが生活者の方が望んでいることなのか?そういった葬儀社にリピートや口コミがつくかということには懐疑的です。葬儀はもともと経済行為では無かったわけですから、ビジネスとして突き詰めるほど葬儀の本質から離れていくように思います。
我々のような地域とともに生きて歩むような葬儀社はゴールの無い長距離走の経営がもとめられます。
どうやって地域の生活者の皆さんに喜んでいただくか、価格以外の価値を感じていただけるか、そしてその活動を永続的にできるかが自社の課題ですね。課題への取り組みの一つとして、私は数年前に社長を寺本恵美子に譲り会長となりました。これからは寺本の後継者を育成していくことが当面の目標です。

事業展開について

お葬式で幸福を感じられる地域社会づくりを 寺尾俊一氏 家族葬専門葬儀社オフィスシオン会長 ー奈良の創生人 Vol.2ー

葬儀以外にも様々な事業展開を目指していると伺いましたが、どのような活動をされているのでしょうか?

地域の方からお声がかかった活動や事業への参加は積極的に行っています。地域の経営者の団体、生活者の支援活動、お寺へのサポートなど、特に会長職となってからはそれらの活動に注力していますね。
経営は「経」と「営」という言葉でできています。「経」とは織物を織るときの縦糸を指し、仏教では「変えてはいけない生きる目的や意味」を指します。「営」は時代に合わせて形を変える営みを指します。今、私は地域と共に生きる葬儀社として「経」の部分に注力しています。
幸せなお葬式を行ってもらうには、幸せな人生を歩んでいただかなければならない、幸せな人生には人の繋がりや地域の活気が必要です。お葬式という木を育てるのに、葉っぱや実を育てるのではなく、根っこを育てる活動に微力ながら全力を注いでいます。
葬儀の価値を多くの方に感じていただきたいと思う葬儀社は多いですが、亡くなってからのお付き合いでそんなことを言い出しても駄目なんです。人生の価値を感じていただけるような地域社会を創造していく努力をしないと葬儀や供養の価値は感じていただけません。その為に何ができるか、何をしていくかがこれからの葬儀社の事業のあり方だと思います。

これからのビジョン

お葬式で幸福を感じられる地域社会づくりを 寺尾俊一氏 家族葬専門葬儀社オフィスシオン会長 ー奈良の創生人 Vol.2ー

地域密着とは地域とそこに住む人の将来も考えて活動していくということですね。最後に今後のビジョンを教えてください。

お葬式で幸福を感じられる地域社会づくりを 寺尾俊一氏 家族葬専門葬儀社オフィスシオン会長 ー奈良の創生人 Vol.2ー

今、お葬式に対して多くの生活者の方は「やらなければならないからやる」という義務的で病理的な考えをお持ちではないでしょうか。
オフィスシオンでは「幸福モデルのお葬式」をスローガンに、人生や縁に感謝して幸福を感じてもらう本来のお葬式のあり方を提案しています。
多くの方が自分や家族、仲間の人生を「良い人生だった」と思っていただけるように、地域の方を応援し、繋ぐ活動にこれからも注力していきたいですね。

取材・記事作成:藤野正成
奈良ビジョン編集
※掲載情報は2023年11月時点

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